子どもと話そう原子力発電所

 1986年のチェルノブイリ原発事故の後、各地で原発反対運動が盛り上がった。私も、まだ独身だったが、これは大変なことだと思って市民運動に参加したりしていた。その頃に出会ったのが神奈川県の小学校教諭、名取弘文さんの、6年生の公開授業を記録した「子どもと話そう原子力発電所」という本である。(農文協人間選書140・1989年)
 今回の福島原発の大事故で、当事恐れていたことが現実となってしまった。
 改めて読み直してみると、愕然とすることがたくさんあった。チェルノブイリ後、市民の不安が広がる中、東京電力が「日本のはソ連のとは違うから安全」とかなんとか説明している。先のスリーマイル島の事故の後、ソ連は「ソ連のはアメリカのとは違う」と説明していたらしい。そして日本のはその、アメリカのと同じタイプなのだ。
 福島の人たちは、100パーセント安全とは決して言えないリスクを負いながら、東京の人たちのための電力を作る恐ろしい原発をかかえてきた。そして今回の事故である。
 25年前のチェルノブイリの時、原発に頼るシステムを見直していれば、こんなことにはならなかったのに・・・。これはもう、中部電力が新たに作ろうとして祝島の人たちが命がけで反対している上関原発など、言語道断である。原発は子孫の世代への負の遺産以外の何物でもない。目先のわれわれの便利さと引き換えに、こんなことをしていいはずがない!