ショパン

 若い頃私は、ショパンがあまり好きではなかった。フリフリのドレスを着てショパンを弾くなんて「女の子らしいこと」はイヤだった。みんながあこがれるものには興味がなかった。今から思えば単にへそ曲がりで素直でなかっただけのこと。年令を重ねるごとにショパンの魅力はいやおうなく私を捕らえるようになった。生誕200年の今年の発表会でショパンをテーマにしようと決めてから、いろいろ彼について調べたり、知らなかった作品を聴いたりしているうちに、すっかりファンになってしまった。
 きのうも紹介したチェロソナタ。ほとんどの作品がピアノ曲であるショパンが、ピアノの次に好きだったのがチェロだったと初めて知った。でもチェロソナタはたった1曲。それがあまりにも素晴らしいので、生きている間に出会えてよかったと思うほど。
 私が弾く予定のバラード3番。今日アナリーゼ(楽曲分析)をしていて、最初のテーマが再び現れる所を改めて確認すると、何故か思わず涙が出てきてしまった。
 この年になって思う、ショパンは人生の甘い辛いを味わいつくしたからこそこんな音楽が書けたのだ、と。39歳という短い人生だったけれど。そう考えると、やっぱり人生にはいろいろあっていいんだ、と思えた。